・・・クドが考えていたこと
ちぐはぐで、ばらばらな自分
人が考えることからずれてしまった自分
だからゆがんで役に立たないんだ、と考えていたこと
「世界の役に立たない歪んだ歯車だと」
「まったく、そのとおりなので返す言葉もありません」
違うと思う
クドが自分を役立たずな歯車だと、考えていたこと
それは違うと思う
求められてそこに合わせるだけの生き方を人は歯車だという
世界は大きな時計のようなもので、
歯車一つ、螺子一つなくなってもどこかから補われて
時計は時を刻み続けることだろう
いつまでも、いつまでも
欠けた歯車、欠けた螺子のことなんかまるで無かったように
でも、それは半分だけ正しくて、
半分だけ間違っている
替えが効く歯車でも、歪んだ螺子だとしても
そこにいるだけで、人は世界という時計を動かしているはずだ
求められる歯車のかたちでなくても、そのままの、僕たちで
誰かみたいな僕、ではなくて
誰かみたいなクド、ではなくて
僕は、僕のままで、クドは、クドのままで
話して、触れて、想いあうことで
小さな積み重ねで、少しずつ世界を変えていくことができると思う
前に進むために、変えていきたいと思う
だから、違う、と言ってあげたかった
クドの願いが歯車になることだとしたら
クドの考えていることに「それは違う」と言ってあげたかった
クドの声が聞こえる
…僕は何もできない
クドと僕は違う場所にいる
…僕は何もできない
クドは独りで世界を回している
…僕は何もできない
でも
だから、僕は、伝えたいと思った
聞こえなくていいと思った
伝わらなくていいと思った
僕はクドに言わなくてはならないから、言うまでだった
だから叫んだ
「クド!」
「クドリャフカっ!」
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