「我は魔王、百鬼眷属の王である。」
刹那------見えざる手はグレッグの顔を刎ねていた。
俺は目を疑う…敏捷性は忍者よりは劣るが勇者だってそこそこの神経を持っている。
しかし、その手は俺が察知するより高速で飛び出てグレッグの顔を潰したのだ。
「どうした?我に刃向う兵はこの程度で臆するのか…程度が知れるわっ!」
魔王は透明な---しかし、血濡れて見切りやすそうな---その手を自分の腕に収納すると同時に
怯んだ俺たちに突進してきた。
「俺に任せろ!」
ピーターは魔王の突進を防御系魔法で受け止める。
すかさず、魔王は魔剣を振り上りあげたがピーターは魔王の懐に入って反撃の隙を無くす。
その後ろでネエルが蘇生系魔法を唱えているが…だめだ!魔王の射程距離範囲内だ!
「ネエル!後ろに下がれ!」
「待って!もう少しで術式が完成s 」
ネエルの喉は赤く染まり、頭には五本の黒い指と勢いのある血しぶき…一本目
右手に持っていたはずの杖は右腕と共に綺麗に切断されていた…二本目
魔力を増幅させる魔石は飛んだ左腕の露出して骨と同じく割れていた…三本目
胸元に大きな手形、心臓は壁に叩きつけられて破裂していた…四本目
合計四本の黒腕がネエルをネエルと分からないものに変えていた。
「ふん…我が他の者と闘っている間に我に攻撃するのはともかく他の物を蘇生とな…?」
「ね、ネエル…!」
「我に挑むは勇気ある者、敵地で無防備に蘇生やら回復なぞするものには死で十分であろう…!」
「くっ!貴様ぁああああああ!」
「ピーター!いったん下がれ!」
「俺はっ!許さんぞぉおお!」
ピーターの猛攻が魔王の進行を阻止する。
魔法剣士である彼がこれだけ激昂したのは婚約していたネエルを殺した魔王への復讐の炎であるに違いない。
黒腕を斬り払い、魔王に対し剣を振り回す---その中にも魔王の邪眼や肩口などの急所を狙った攻撃を的確に混ぜている---魔王を圧倒している…!
「ほほう…さっきのやつとは違いお前のその気炎…とてもいいぞ!」
「黙れぇ!貴様を断罪しネエルの敵をうってやる!死ねぇええ!」
咄嗟に、魔王の横に回りこみ脇腹に突きを入れる…それを回避した魔王はピーターの盾を投げつけられ一時的に視界が遮られた…視界が盾ではなくなったとき、見えたものは神聖なる業の焔であった。
「これがかわせるかぁ!」
術式はすでにピーターの手の内で完成していたらしい…その膨れ上がった青火は魔王の何十倍のも大きさ…城の天井は突き抜け、暗澹としていた世界に一条の光明が炎を軸に輝いていた。
「聖超級魔術を容易く使いこなすとはな…それでこそ我が相手に相応しいが。」
それまで圧倒的な光と熱の存在に小さく見えた魔王の背中には黒と赤の外套がたなびいている…
(あの外套はっ!)
「くらええええええ!」
「ピーター!速く炎を槌ち落とせぇえええ!」
光る炎は竜を形作り闇を飲み込む…
「この世界にそのような巨大な光ないらぬ!薄暗く、絶望の淵を彷徨う昏迷が欲しいのだ!」
黒い世界…
黒と赤の混沌は世界を包み、空を覆い、海に落ちて、大地に浸透する…
気付くとピーターの亡骸は魔王の影に沈んでいた。
「我が外套はドラゴンの炎を反射し、光を吸収する…より強い光にはより強い闇があるものだ!」
大理石の染み込んだ黒の床を魔王が歩む…こちらに向かって。
はたして俺一人で勝てるのか。
圧倒的な力の差に三人は死んでしまった、パーティは全滅状態だ。
さっきから頭の中でGAMEOVERという文字がひっきりなしに浮かんでくる…
おれはGAMEに負けて死んでしまうのか?!
「どうだ?傍から見ていたお前はこの力の差をどう思う?
圧倒的な力の差と多彩な宝具、そして我が魔力の胎動…お前も気づいているんだろう?」
「そうだな、確かに俺はGAMEから見れば負けてしまう運命なのかもしれない…だが---」
「俺は戦い続けるしかない…戦い続ける未来しか見えない…!」
「ふっ…貴様は運命に逆らうことしかできない!そして、何度も死んでいく!」
「その度に強くなって帰ってくる…!なんとも面白きものよ!」
「なんとでも言ってくれ…!俺はあんたに勝つ!」
「よろしい…ならば私も本気を出そうか!」
俺は剣を抜くと魔王に向かって疾走した…
fin
---------- 終了 -----------
ぶっちゃけると俺の空想世界です
胡坐のものはもっとちゃんとしている(?)ので見てやってください
っていうか俺勉強しないで何をやっているんだ…
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